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タケとあられのブログ

リタイアした夫婦が、郷里の片田舎で両親の世話をしながら、農業や自治会の仕事に追われ、ゆとりがあるはずだった生活に揉まれながら諦めずに趣味に拘り、二人三脚で生き方を模索する、、、そういう記録を発信します。
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「殺人犯はそこにいる」を読む
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     「殺人犯はそこにいいる」 清水潔 新潮文庫

     

     まず、この本を読了するのにかなり時間が掛かった。理由は読書に充てる時間の確保が年始から余りできなかったからだ。ごく短時間ずつ読み繋いでようやく読了したのだった。読後感は、極めて読みやすい文章で、著者は流石報道記者だなと思った。論理展開や表現が適切で無駄がない。しかも、文脈には遊びもなく、ある種の迫力を感じた。それは、読者に自身の主張を理解してほしいと願う気迫のようなものだ。扱っているテーマはそういう重大な問題だった。

     

     表題は、本来の殺人犯が著者の独自捜査によれば事件現場のすぐ近くに何食わぬ顔をして生活しているという。幼児を誘拐して殺害した連続殺人事件だ。捜査に繋がる情報を提供するが、警察は動かなかった。時効の問題とそれ以上に壁となったのは、えん罪事件が起きていたからだ。犯人と決めて逮捕、死刑判決まで漕ぎ着けた殺人犯が再審の結果無罪になった。つまり冤罪だった。冤罪を起こした警察の取り調べや、逮捕の決め手になったDNA鑑定の誤りなどが白日の下になるのを隠すために、時効成立を理由に捜査を継続しなかった。現場の判断だけでなく組織の上層部が絡んで意思決定された結果を告発するものだ。

     

     現実に起きた事件と冤罪で、マスコミ報道で知らされた記憶がある。同じ処理ミスが考えられるDNA検査で逮捕、有罪となった事件が別にある。その事件では、死刑判決から間もなく死刑が行われている。検察から処刑を急ぐような働きかけがあったようだが、処刑してしまえば一件落着等というような極めて強引で乱暴な納め方だった。この作品でも触れているが、処刑された事件の冤罪は取り返しがつかない。そこに世間の注目が及ばないようにするために、真犯人を野放しにしたと著者は怒る。

     

     何故冤罪は起きるのか、原因は一様ではないが、無罪の罪で長年刑に服したり、処刑された本人の家族はたまったものではない。事件の発生から処刑までには、組織の論理や関係者の思惑が様々な形で絡む。そして、権力は決して誤りを認めようとしない。屁理屈でもなんでも言い訳をしながら無視する。ここが、次なる冤罪を生む危ういところだと当事者が気づいていない。

     

     著者が凄いと思ったのは、報道のための取材の中で冤罪の匂いを嗅いでから再審無罪を勝ち取るまでの取り組みと、分厚い権力の壁にも臆せず発揮した正義感だ。ここまでやるかという読後感だった。冤罪の構造はともかく、一人の記者がどのように冤罪を勝ち取ったかをよんで知る価値があった。

     

     最後に、文庫のカバーに印刷された出版社の文責の言葉を掲載する。

     

    「申し訳ありません。僕はこの本をどう進めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました。この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています。500Pを超える本です。怯む気持ちは分かります。小説ではありません。小説以外の本を買う習慣がない方には、ただそれだけでもハードルが高いかもしれません。

     それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです。これまで僕は、3000冊以上の本を読んできました。その中でもこの本は、少しでも多くの人に読んで欲しいと心の底から思える一冊dす。

     この著者の生きざまに、あなたは度肝を抜かれ、そして感動させられることでしょう。こんなことができる人間がいるのかと心が熱くなることでしょう。

     僕らが生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう。知らないでは済まされない現実が、この作品では描かれます。あなたの常識は激しく揺さぶられることでしょう。あなたもこの作品と出会って欲しい。そう切に願っています。ここまで読んでくれた方。それだけで感謝に値します。本当にありがとうございます。」

     

     書店で手に取って、この文章を読んだことから読み始めたのだった。感想はまさに、この文章通りだった。タケ

    | 読書 | 16:01 | comments(0) | - | - |